| 授業方針・テーマ |
本講義は、日本、中国、英語圏、ドイツ語圏、フランス語圏の文学・言語を専門とする教員によるリレー講義です。それぞれの地域の代表的な作家や作品(小説・詩・思想など)に触れ、文学の歴史や多様な特性を考察することを通して、文学の諸相を概観すると同時に、現代を生きる私たちにとって文学がどのような意義を持ちうるのかを考えます。
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習得できる知識・能力や授業の 目的・到達目標 |
日本、中国、英語圏、ドイツ語圏、フランス語圏の文学についての基礎的な知識。 各国の作品の読解と鑑賞を通して、異文化理解を深めること。 |
授業計画・内容 授業方法 |
【授業計画】
第1回 イントロ:子ども時代の追憶:杜甫、魯迅(佐藤賢・中国文化論) 第2回 アルファベータ──〈声〉のアーカイヴ(吉田朋正・英語圏文化論) 第3回 文字・場所・記憶術──ヘルメス的伝統から普遍言語へ(吉田) 第4回 戦争の記憶──ホメーロスから『21世紀の戦争と政治』まで(吉田) 第5回 枠物語と記憶:テオドール・シュトルム『みずうみ』(1849)(金志成・ドイツ語圏文化論) 第6回 自伝と記憶:クリスタ・ヴォルフ『幼年期の構図』(1976)(金) 第7回 アーカイブと記憶:W. G. ゼーバルト『アウステルリッツ』(2001)(金) 第8回 甦る過去:マルセル・プルースト(清水さやか・フランス語圏文化論) 第9回 記憶がない「私」:サミュエル・ベケット(清水) 第10回 消えゆくものを記録する:パトリック・シャモワゾー(清水) 第11回 記憶と現実:徳田秋聲『黴』(1911)(大杉重男・日本文化論) 第12回 記憶と記録:谷崎潤一郎『吉野葛』(1931)(大杉) 第13回 武器としての記憶:大西巨人『神聖喜劇』(1978~1980)(大杉) 第14回 自省としての記憶:巴金『随想録』(佐藤) 第15回 まとめ(佐藤)
【授業内容】 今年度は「文学と記憶」というテーマで、五人の教員が以下の内容を講義いたします。
(中文・佐藤賢)「記憶」は、「文学」とさまざまなかたちで広く深くかかわっています。初回は導入として、杜甫や魯迅など中国文学に見られる子ども時代を追憶する形式を持つ文学作品を取り上げます。第14回では、近代中国の作家・巴金の『随想録』を取り上げて、<想起>することの現在的な意味を考えたいと思います。
(英文・吉田朋正)西欧アルファベットの発祥から英語圏最初の活版印刷であるキャクストン『トロイ歴史集成』あたりを入り口に(第1回)、印刷文化の黎明たるルネサンスから十七世紀の科学革命期にいたる〈記憶〉と〈記録〉の問題(第2回)、さらには西欧において常に歴史を超えた文学の主テーマであり続けた〈戦争〉と〈記憶〉に関して(第3回)等々、幅広い時代を移動しながら“literature”と呼ばれるものの一般的な意義を考えてみたいと思います。
(独文・金志成)各回で近現代ドイツ文学の主要な作品をひとつ取り上げ、「文学と記憶」について物語技法の観点から考えていきます。19世紀の詩的リアリズムを代表する作家シュトルムの『みずうみ』については短編小説における枠物語と回想形式、戦後の東独作家クリスタ・ヴォルフの『幼年期の構図』については自伝を語る際の人称の問題、21世紀の世界文学に大きな影響を与えたゼーバルトの『アウステルリッツ』については写真や書類といったアーカイブと記憶の関係に注目します。
(仏文・清水さやか)近現代フランス文学を代表する3人の作家を取り上げ、それぞれの作品のなかで「記憶」がいかに探求されているかという点に迫ります。初回に読むのは、プルーストの『失われた時を求めて』。記憶を主題にしたこの世界的名作を読みながら、不可逆な時間の流れのなかで失われたはずの過去が、現在という時間のなかに豊かに甦る可能性を検討します。次にひもとくのは、記憶が(ほぼ)ない登場人物ばかり繰り返し描くベケットの作品。いくつかの小説や戯曲を概観し、記憶とアイデンティティーがどのような関係を取り結んでいるのかという問いに向き合います。最後に読むのは、カリブ海のフランス領マルティニーク島出身で、クレオール文学の担い手シャモワゾーの小説。近代化の波のなかで消えゆかんとする豊穣な島の文化をいかに記録するか、ということを追求する彼の作品世界に足を踏み入れ、文学と記憶という問題を証言の問題と結びつけて考えたいと思います。
(日文・大杉重男)日本近現代文学の主要な作品を計三つ取り上げ、「記憶」をめぐるさまざまな問題に焦点を当てつつ、文学について考える。一回目は日本自然主義文学の代表作家のひとり徳田秋聲の最初の私小説『黴』を素材として、作家が自身の私的な記憶を小説として綴るとはどういうことなのかを考える。二回目は大正・昭和期の代表作家のひとり谷崎潤一郎の中篇小説『吉野葛』を解読しつつその重層的な語りの構造の中で、母と歴史をめぐる記憶と記録がどのように交錯させられているかを問う。三回目は戦後文学の特異な作家として知られる大西巨人の長篇『神聖喜劇』において、主人公がその並外れた記憶力を武器にいかに軍隊組織の不条理に抵抗するかを検証する。
【授業方法】 日本文化論、中国文化論、英語圏文化論、ドイツ語圏文化論、フランス語圏文化論の5人の教員によるオムニバス形式。 |
| 授業外学習 |
講義のなかで適宜、参考文献を紹介し、読むことを奨励します。 |
| テキスト・参考書等 |
教科書は特に使用しません。基本的に、必要書類は担当教員が参考資料をkibaco 経由で配布します。コピーするかパソコンその他のデヴァイスで持参してください。
参考文献は、講義のなかで各担当教員が適宜紹介します。
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| 成績評価方法 |
授業への積極的な参加、教場試験の成績などから総合的に判断します。 原則として2/3以上(10回以上)の出席が必要です。
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質問受付方法 (オフィスアワー等) |
毎回の授業の終わりに質問を受け付けます。 |
特記事項 (他の授業科目との関連性) |
第一回の冒頭で本講座についてのガイダンスを行いますので、受講希望者は必ず出席して下さい。 関連する他の授業科目としては、人文社会学部・人文学科(人文・社会系国際文化コース)の、日本文化論、中国文化論、英語圏文化論、ドイツ語圏文化論、フランス語圏文化論があります。 私語と遅刻は厳禁。スマートフォンの使用も禁止します。 コメントシートの提出を毎回の義務とします。 |
| 備考 |
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