授業方針・テーマ |
「ジャック・デリダ講義録(1995-96年)『歓待』」を読む ジャック・デリダ(1930-2004)は 1991 年以降、大主題「責任の問い」のもとでセミネールを実施しました。この大主題は、証言、歓待、偽誓と赦し、死刑、獣と主権者と毎年主題が変奏されていきます。1995-97年、2年間にわたって論じられたのは「歓待」でした。「歓待」の概念と実践は、グローバル化が進展する現代世界において、政治的・倫理的な場面で重要視されています。異質な存在が混交する状況下で、見知らぬ者をいかに受け入れるのか、受け入れないのかがさまざまな社会的場面で問われているからです。ただ、21世紀になり、頻発するテロリズムへの恐怖心から、難民・移民の激増が既存の社会秩序を揺るがす状況から、異者に対する不寛容さが増しています。歓待や寛容とは何か。他者や異邦人とは誰のことか。歓待と敵対の対立はいかなるものか。他者を受け入れるとき、自己や我が家はいかに変容するのか。これらの問いを考えるべく、今日的な状況を踏まえた上で、本演習ではデリダの歓待論を読み進めます。
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習得できる知識・能力や授業の 目的・到達目標 |
本演習を受講するあなたは、ジャック・デリダのテクストの読解を通じて、さまざまな主題を渉猟することになる。また、テクストの分析を通じて、フランス語と日本語の能力を洗練させることがあなたには期待される。 |
授業計画・内容 授業方法 |
各回でデリダが参照する文献は以下の通り。毎回 15-20 頁程のフランス語を読み進める予定。 フランス語の学習経験に合わせて、予習と参加をしてもらえればかまいません。 1. ガイダンス 2. 第1回①導入:カント「永遠平和のために」 3. 第1回②導入:カント「永遠平和のために」 4. 第2回①「歓待」の定義:バンヴェニスト『インド=ヨーロッパ諸制度語彙集』 5. 第2回②「歓待」の定義:バンヴェニスト『インド=ヨーロッパ諸制度語彙集』 6. 第3回① 外国人と敵 7. 第3回② 外国人と敵 8. 第4回 プラトンにおける外国人の問い 9. 第5回 クロソウスキーにおける歓待の思想 10. 第6回「我が家」の問い 11. 第7回 歓待の法 12. 第8回 「不気味なもの」 13. 第9回 歓待の政治 14. 補遺資料の読解 15. まとめ 授業は基本的に対面で実施されるが、オンラインで実施されることもある。その際はkibacoなどを通じて事前に告知する。 |
授業外学習 |
授業の内容を復習しながら、次回のテクスト抜粋を読んでくること。 |
テキスト・参考書等 |
上記の授業計画に記した文献(抜粋)は基本的に複写物を配布する予定。Jacques Derrida, Hospitalité. Volume I. Séminaire (1995-1996), Seuil, 2021. 部分訳であるジャック・デリダ、アンヌ・デュフールマンテル『歓待について』(廣瀬浩司訳、ちくま学芸文庫)は適宜参照する。 |
成績評価方法 |
授業への参加、発表とコメントで成績評価。原則的に、試験・レポートはおこなわない。
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質問受付方法 (オフィスアワー等) |
オフィスアワーは特に設定しませんが、直接質問したい場合は随時受付しますので、事前にメール(ynishi@tmu.ac.jp)でアポイントメントをとってください。 |
特記事項 (他の授業科目との関連性) |
大学院向けの演習であるが、学部学生でも希望者は参加可能。 |
備考 |
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