授業方針・テーマ |
民法典のうち、民法第2編「物権」の中の第1章から第6章までと、民法第3編「債権」の第2章から第4章までについて講述する。 |
習得できる知識・能力や授業の 目的・到達目標 |
民法は、市民社会における関係を、権利と義務という要素で捉えている。そこでは社会全体が、人と物との関係(物権)と、人と人との関係(債権)とに分けて体系立てられる。ところが、社会生活上で起こる事柄に、このような区別はない。 そこで、講学的体系よりむしろ取引に関わる実社会上の事象を正面から捉え、取引の局面において、人と人との間で契約が締結され、その契約に基づいて所有権の移転をはじめとする人と物との関係に変化が生じることを、立体的に(講学的体系区分をまたいで)理解できる講義を目的とする。 |
授業計画・内容 授業方法 |
【授業計画・内容】 第1回 Ⅰ イントロダクション 1 物権と債権の違い、契約の分類 2 民法二部の扱う領域 3 所有権の帰属が標準とされない諸事例(二重譲渡、危険負担、果実の収受) 第2回 Ⅱ 物権変動とゲーム――対抗関係に期待される機能(民177条) 第3回 Ⅲ 契約総論――双務契約固有のルール:牽連関係 1 原始的不能と後発的不能 成立上の牽連性(民412条の2) 第4回 2 同時履行の抗弁権 履行上の牽連性(民533条) 第5回 3 危険負担 存続上の牽連性(民536条、民567条参照) 第6回 4 契約の成立(申込みと承諾(民521条~民532条))と交渉段階の付随義務(民1条2項) 第7回 5 契約の終了(解除(民540条~民548条)を中心に) 第8回 Ⅳ 物、所有権・占有権 1 権利の客体、物の定義(民85条~民89条)、所有権の内容(民206条~民208条) 第9回 2 所有権の効力――物権的請求権、相隣関係(民209条~民238条) 第10回 3 所有権の取得(その1)――承継取得 第11回 4 所有権の取得(その2)――原始取得(民162条・192条・239条) 第12回 5 共同所有関係(民249条~民264条) 第13回 6 所有者不明の土地・建物(民264条の2から民264条の8) 7 管理不全の土地・建物(民264条の9から民264条の14) 第14回 8 占有権(民180条~民205条)――占有訴権(民197条~民202条) 第15回 9 動産の物権変動の特色(民180条~民195条) 第16回 10 不動産登記の機能(民177条、不登1条~不登5条) 第17回 Ⅴ 契約各論 1 総説 2 贈与(民549条以下) 第18回 3 売買――意義・一方の予約・買戻し・手付け(民555条~民557条、民579条以下) 第19回 4 売買――売買の効力(民560条以下)、契約内容に適合しないとき(民562条~民566条) 5 交換(民586条) 第20回 6 消費貸借(民587条以下)(消費者金融なども含む) 7 使用貸借(民593条以下) 第21回 8 賃貸借(民601条以下)(借地借家法を含む) 第22回 9 雇用(民623条以下) 第23回 10 請負(民632条以下) 第24回 11 委任(民643条以下) 第25回 12 寄託(民657条以下) 第26回 13 組合(民667条以下)・終身定期金(民689条以下)・和解(民695条以下) 第27回 14 非典型契約(無名契約)――例えば、旅行契約やクレジット契約など 第28回 15 事務管理(民697条以下) 第29回 16 不当利得(民703条~民708条) 第30回 補足と総括
【具体的講述内容の告知】 事前(その週の月曜日)に次回の講述内容の予告を、そして事後(その週の金曜日)には前回の講述内容の振り返りを、kibacoの「お知らせ」に掲載する。
【授業方法】 上記の授業計画に沿って講述していく。大教室講義であるから、講義時間中に受講生からのフィードバックをとることはできない。けれども講義は単なる情報提供のためのものでなく、教員が受講生に向けて考えるヒントを提供する思考作業のための場だと理解して臨んでほしい。よってその成果が問われる成績判定試験では、受講生に対して思考の形跡を問う“論述形式”の出題となる。
【対面・オンラインの別】 対面方式を採る。 |
授業外学習 |
各回の受講にあたり、kibacoのお知らせ掲載の「具体的講述内容の告知」(各回につき事前・事後の計2回)を参照すること。 とりわけ、事後に掲載する「講義の振り返り」では、講述したポイントに加えて課題を提示する。 その課題を中心に自由に考察したのち、それら考察内容を言語化して文章として示すことができるようにしておくこと。 これらの作業により、不明な点・疑問点などが鮮明化する(他者に伝えられるようになる)ことが多い。 それら疑問点等について、受講者同士で共有して考察を深めるなり、以降の講義やオフィスアワー(アポイントメントにより調整)の機会を用いて講義担当教員に示すなり、自学自習を深化させることを期待する。 |
テキスト・参考書等 |
【テキスト】 テキストは指定せず、ウェブで講義案を配布する。
【参考文献・参考書】 参考文献は講義内で適宜指示する。参考書としてさしあたり、下記を推薦する。 大村敦志『新基本民法2 物権編 ~財産の帰属と変動の法』(有斐閣、第3版、2022年) 大村敦志『新基本民法5 契約編 ~各種契約の法』(有斐閣、第2版、2020年) 永田眞三郎・松本恒雄・松岡久和『物権 第2版』(有斐閣、2019年) 淡路剛久・鎌田薫・原田純孝・生熊長幸『民法Ⅱ〔第4版補訂〕』(有斐閣Sシリーズ13、2019年) 藤岡康宏・浦川道太郎・松本恒雄・磯村保『民法Ⅳ 債権各論〔第4版〕』(有斐閣Sシリーズ36、2019年) 中田裕康・潮見佳男・道垣内弘人編『民法判例百選Ⅰ 総則・物権〔第8〕』(有斐閣、2018年) 中田裕康・潮見佳男・道垣内弘人編『民法判例百選Ⅱ 債権〔第8版〕』(有斐閣、2018年) |
成績評価方法 |
定期試験(論述筆記)による。 出題形式は、事例式問題である。
採点基準は下記のようになる。 問題発見能力(30%) 分析力・構成力(30%) 論理性・合理性・再現性(20%) 文章表現力(20%) |
質問受付方法 (オフィスアワー等) |
【オフィスアワー】 受講生の時間割の多様性に配慮して、オフィスアワーは設定しない。質問などは随時受け付けるので、連絡がある場合はokesha@tmu.ac.jpまでメールでアポイントメントをとること。なお送信するメールアドレスについては、本学の学生専用アカウント(@ed.tmu.ac.jp)からの送信を勧める(迷惑メールフォルダーに落ちる危険を回避できることに加えて、ドメイン指定による受信フォルダーの振分設定をしているので、確実に届くうえ他のメールに紛れることなく比較的早く目に留まることから)。
【対面・オンラインの別】 質問者の希望や利便性に応じて、質問対応に関しては、‘対面’・‘オンライン’、これらいずれでの希望にも応じる。
【試験期間前および期間中の接触禁止】 なお、定期試験期間前については、私が担当する科目の試験実施日(複数ある場合は早い方)の1週間前から私の担当する科目の試験終了日まで、その科目を履修しているかに関わらず、全ての学生(大学院生を含む)は、一切の接触を禁じる。こちらからの返信作業が、接触禁止期間にかかるメールについては、接触禁止が解けたのちに返信する。 |
特記事項 (他の授業科目との関連性) |
【パソコン端末等の使用許可】 ウェブ配付の講義案が大部となることから、端末(パソコン・タブレット・スマートフォン等)を、受講中に教室内で使用することを許可する。
【他の科目との関連性】 民法一部を履修済み、もしくは履修中であることが望ましい。 |
備考 |
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